
『大江健三郎全小説12』
2019年8月9日 第一刷発行
株式会社講談社
--------(抜粋)
お祖母ちゃん(オーバー)の魂を受け継ぎ「救い主」となったギー兄さんは当初人々から偽物と見なされる。次第に賛同者をふやし、現代人の魂の救済を模索してゆく模様を、独特の性遍歴を経たサッチャンが記録してゆく。教会分裂の危機の中で襲撃され障害者となるギー兄さん。最後の決断と死、未来への大いなる励ましとは何か?
【収録作品】
「救い主」が殴られるまで──燃えあがる緑の木 第一部
揺れ動く〈ヴァシレーション〉──燃えあがる緑の木 第二部
大いなる日に──燃えあがる緑の木 第三部
──魂の救済
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・燃えあがる緑の木
第一部、第二部、第三部に分けて「新潮」掲載(1993年9月~1995年3月)
この『燃えあがる緑の木』はイエーツの詩の引用から。
第二部 揺れ動く(ヴァシレーション)
第一章 イェーツに導かれて
ウィリアム・バトラー・イェイツ - Wikipedia総領事はイェーツを耽溺していた。
イェーツ『魔法』
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《この大いなる心(グレート・マインド)と大いなる記憶(グレート・メモリー)は象徴(シンボル)によって喚起されうる》
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新しく作ったこの土地の教会の進み行く力を表現していると総領事
第二章 「中心の空洞」
ピアニストの泉さんが語ったヒマラヤトレッキング経験
(うらやましい!)
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《露の裂け目から、目の前にエヴェレストが雪に輝く姿を現した時の驚きや、人間とはこのような邪気のない笑い顔ができるものかと思う程純朴な、シェルパやポーター達のこと、彼等と民家の台所のかまどの火の前で歌ったり踊ったりする楽しさ‥‥‥そうしたことに励まされてのトレッキングなのですが、たいてい、一日の終りには、人家の庭にテントを張り、牛や子羊と共に寝るという旅です。そこにたどりついた頃には、疲れと寒さでしばらくは膝を抱え、じっとうずくまっているという状態です。》
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第三章 正直いって神はあるんですか?
神、宗教観 昔から洋画を観て信心深い人達のお祈りの意味を見いだせなかった。
なのでこのあたりピンとこない。
第四章 気象のフィードバック
『治療塔の子ら』のための最初の覚え書
穴埋め的時間稼ぎ・・
第五章 「死に至る手続きの数学的記述」
ザッカリー・K・高安の「癒される者たちの記録」
この森の中に現在の地盤を築いたのは「壊す人」の記述がなつかしみ。
第六章 薔薇の奇蹟
総領事の心臓の不調
そして総領事の死・・真木雄が発見
総領事の望まれた言葉《慰めぬしなる霊よ、われらにきたりたまえ》
葬儀の朝、辺りに漂う薔薇の香りに泉さんがこれを「薔薇の奇蹟」と仲間内で盛り上がる。
途中、泉さんの過去が気になる。
ギー兄さんの説教
第七章 アレクサンダー大王のてんかん
「薔薇の奇蹟」のネタバレ
総領事が買った薔薇の花びらの搾った現役
「壊す人」の爆破じゃないけど、人造湖から子供たちがテン窪を薔薇の香りで満たした。
総領事の死を発見した真木雄は、実はさきのギー兄さんの子供ではなかった。
オセッチャンは想像妊娠の出来事を語る。
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―—サッチャン、あなたのいう「救い主」という言葉は、その向こうに神があるものなの?もっとあなたにそくしていえばね、その背後に神がなければ、あなたのギー兄さんも「救い主」ではありえないの?
―—あなたはこの土地の言葉でいえば、「オトコオンナ」あるいは「オンナオトコ」だった。その難しいところをあなたは自力で乗り越えて、それも自分から矛盾を引き受ける仕方で生きて来たわけね。そして、その過程で、ギー兄さんを支える役割を発見して、自分自分が納得できたのでしょう?
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アサさん
テオ・アンゲロプロス『アレクサンダー大王』
アレクサンダー大王 (映画) - Wikipediaギー兄さんに襲った魂のてんかん
―—Rejoice!
という大合唱が礼拝堂に響く中、人造湖の岸へサッチャンが跳び下りた。
痛む左足を庇いながら人造湖の岸を歩く。
後日談
総領事にはモデルとなった人物が存在していた。
「N首相」に見込まれて大臣官房外務参事官も務めたという西山健彦氏